身近なものなのに、その役割についてあまり語られることのない「お金」。助成にまつわる社会課題の解決や女性が取り組む事業を、投資や寄付がどのように後押しし、新しい未来創りができるかを議論しました。
●主催者挨拶
岸本幸子 - 公益財団法人パブリックリソース財団 代表理事・事務局長
私どもの原点は、寄付者の人生を大切にすること。お預かりしたご寄付を上手に使って、寄付者の社会に寄せる思いを確実に実現したいと考えている。寄付者の志に沿って、これまで地域創成、環境、教育、健康、アートなどをテーマとした基金を設置してきたが、昨年、様々な女性が立場を超えて助け合う「あい基金」を創設した。
あい基金は、女性が取り組んでいる生業の場づくりを、まず東北で応援することからスタートする。あい 基金は、女性が社会のためにお金を活かしたいと思ったときの窓口となり、資金と女性のネットワークを活かした息長い伴走型支援を実現して行きたい。
●基調講演
河口真理子様 - 株式会社大和総研 調査本部 主席研究員
お金との付き合い方は「使う」「貯める」「投資する」「寄付する」の4種類あり、「使う」以外の3つは「社会の活動に自分のお金を融通する=社会のためにお金に働いてもらう」意味で共通。「投資」は一見自分のためのもののようだが、社会に役立つ事業に投資をすることで、社会にも自分にも利益をもたらすことができる。
女性が起こす事業は、収益だけではなく、社会的な目的を持つものが多い、また貸し倒れも少ないので、魅力的な投資先である、とブラジル、イタウ・ウニバンコ銀行の女性向け金融プログラム担当者が語っているように、持続可能な社会を実現するためには、女性への投資が重要である。
これからの経済社会は右肩上がりの成長路線ではなく、限られたシェアを皆で分け合う時代。ビジネスの中でも社会的な課題解決を事業とするソーシャルビジネスが起こっているように、投資や寄付も融合していくと考えられる。
●パネルディスカッション「投資や寄付が後押しする、女性の未来創造」
渋澤健様 - コモンズ投信株式会社 会長
2012年に内閣府の検討委員を務めた時、投資先企業の持続的成長には女性の活躍など見えにくい価値を見える化していくことが重要と気づいた。2020年から大きなパラダイムシフトが起きるとみている。今までの主役は日本の経済成長を支えた60歳以上の層で、一番人口が多く、資産も持ち、投票も行っている世代。それが2020年以降団塊ジュニアに世代交代し、資産をいかに次の世代に移転させていけるかが、これからの日本の持続的成長の重要なポイントなるだろう。また、女性の視点が日本の新しい繁栄を作るために必須だ。世代交代が今までとは違った新しい視点を取り込むことを可能にし、枠の外の価値観を取り込むことによって枠の中が活性化する。
投資も寄付も、実は少額のお金でもできること。是非勇気を出して行っていただきたい。今日よりも良い明日のために企業を応援する投資をミッションとする私たちは、寄付も同じ「投資」と思って収益の一部を寄付するしくみを創業以来持っている。
引地恵様 - 株式会社WATALIS 代表取締役
地元亘理町には、古くから養蚕、縫物、着物などの素晴らしい伝統や資源があり、かつて農家では着物の余り布で作っておいた巾着袋にお米や豆を入れて、お礼を送りあう返礼文化があった。着物を着る機会が減った現代、着物が次の世代に受け継がれず処分されてしまうことを危惧し、震災以降、タンスに眠る着物を回収して新たな価値ある商品にして世に送り出す「アップサイクル」に取り組んでいる。その結果、女性の雇用を生み出し、その子どもたちが伝統文化に触れる機会ができた。日本の美意識と返礼文化を広く世界にも伝えていきたい。
これまでは公的な補助金と借入でアップサイクル事業を行ってきたが、社団法人で行っている場づくり事業には寄付が必要と認識している。どうやっていただいた寄付に対する責任を果たせるか、勉強していきたい。
松下光恵様 - 特定非営利活動法人男女共同参画フォーラムしずおか 代表理事
静岡市女性会館の指定管理者をしており、団体は設立して12年。静岡市も高齢化が進み、若い女性の流出のほか、単身世帯やひとり親世帯の増加、女性の非正規雇用、生活保護家庭の増加など、社会課題が増大している。そこで課題解決型の事業にフォーカスし、女性の就労を後押しするパソコン講座、原因が複合劇なニート女子への就労支援・居場所づくり・インターン、先輩女性から学ぶメンタープログラム、大学生や福祉団体との連携により生活困窮者やその子どもへの支援などにも活動を広げている。
女性会館では自分にどう投資するかという金融教育の視点の入った講座や、別に女性も含む社会起業家を育てる講座も受託しており、きちんと収益をあげて持続可能なビジネスとして立ち上がることを目指している。
河口真理子様 - 株式会社大和総研 調査部 主席研究員
個人のお金がより社会に役立つようになるには、学校での金融教育が欠かせない。自分のお金をどのように配分するかを考える力や、お金が自分の手を離れた後にどのように働いているのかを考えるような想像力を養うことが必要だ。
お金はウィルスのようなもので、生き物に付着していないと活性化しない。思いのある所にお金を投じることで活かされていくものだ。人を巻き込み、育てていく「母性」的な事業にお金をまわすことで社会が良くなっていくと思う。
岸本幸子 - 公益財団法人パブリックリソース財団 代表理事・事務局長
投資、寄付をしたい人と、それを受けたいと思う人を繋ぐ架け橋であることが我々の役割だ。「地域の未来を作りたい」など漠然とした願いを寄付に託されることも多く、寄付者の志と現場のニーズをすり合わせながら一つ一つ設計をし、手ごたえのある寄付にしていくことが使命と認識している。
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